SCENE6 スタッフがついてくるリーダーシップの秘訣 部署やスタッフの特性に合わせた管理術

 理想の管理者像というと、芸能人やスポーツ選手が選ばれることが多い。理想の管理者イコール、理想のリーダーというイメージがあるのかもしれない。そこで、理想の管理者とはどうあるべきかについて考える。理想の管理者とは、適切な管理と適切なリーダーシップを取れることが条件である。

 奈須は、魅力的な管理者になりたいと思っている。管理ができたとしても、自分に魅力がなければスタッフがついてこないことは周囲の管理者を見ていて分かっている。魅力的な管理者とは、適切な指示を与えることと面倒見の良さにあるのではないかと感じている。奈須はリーダーシップとは何か、師長に求められるリーダーシップについて、若手の勉強会の議題として提案した。そして、本日がその勉強会である。

石崎:今日のテーマは、リーダーシップです。魅力的な管理者は、リーダーシップが適切だと言われています。そんなリーダーシップについて、奈須さんが資料をまとめていますので、講義を聞いてみましょう。

奈須:石崎君、そんな形式ばった紹介をされると発表しづらいなぁ。

石崎:早速、はじめよう。

奈須:今日は、リーダーシップ理論としてPM理論とSL理論を中心に説明したいと思います。リーダーシップをとるに当たり重要なことは、(図5)のように、時代の変化によってリーダーの資質が変化します。時代の変化に機敏に対応して、リーダーシップスタイルを変えて行くことが管理者の役割です。このリーダーシップを組織の成熟に合わせて変化させることがPM理論(PM理論)です。

―PM理論

奈須:PM理論とは、パフォーマンスであるPとメンテナンスであるMで表現され、(図6)のようにリーダーシップを4つに分類しています。4つの分類は、pm、Pm、pM、PMとなります。理想は、PM型のリーダーシップです。ここで、Pのパフォーマンスとは、組織集団の目標を達成させる能力であり、Mは組織集団を維持する能力となっています。pとPの違いは、pは業務の目標達成をしようとするリーダーシップが甘く、Pは逆に強いということ、mとMは、mは組織や部下の面倒見が悪く、Mは逆に面倒見が良いということになります。皆さんは、どれに分類されますか?

渡辺:おれとしてはpのリーダーはいらいらするなあ。

山田:私は、mのリーダーは困りますね。

奈須:理想は、PM型なので、皆さんもそうなるように頑張ってください。この理論は、三隅二不二さんが提唱したので、詳細は各自で確認してください。続いて、SL理論について説明します。

―SL理論

奈須:SL理論(図7)とは、部下の成熟度に合わせてリーダーシップを変えることを説明したリーダーシップ理論です。SL理論は、Situational Leadership Theoryといわれ、状況に応じたリーダーシップ理論ということなのです。さて、その状況とは、S1からS4に分類されています。S1は、スタッフの技術などの成熟度が低いことを想定しています。新人スタッフなどは、これにあたります。S1に対するリーダーシップは、指示中心になります。皆さんの職場に当てはめて考えてもらえればいいのですが、新人が自発的に行動できるわけではないので、指示が中心であり、導いてあげないといけないということと同じです。S1を脱するとS2になります。S2は、仕事が軌道に乗りつつある状態です。仕事が軌道に乗りつつあるが、自発的に仕事をすることが難しい状態です。この段階になると気づきを与えるようなことをリーダーシップへと変化させ、自立し考えて行動できるようにしていきます。S3は、自分で判断し仕事ができるようになってきているため、リーダーシップはスタッフの支援を中心としていく必要があります。S4は、スタッフが成熟しているため、任せるようなリーダーシップになります。このような状況に応じたリーダーシップをとることがSL理論となります。ちなみに、S4のように成熟したスタッフに対して、指示的な行動をすれば反発されかねないことは、皆さんが一番おわかりではないかと思います。

石崎:なるほどね。医事課も昔のように、S1の状態のスタッフに仕事を見て覚えろということではいけないということだね。確かに、SL理論のように順番にリーダーシップを変えていくことが一番いいのかもしれないね。

奈須:組織やスタッフがどの状態にあるのかを理解すれば、これからは適切なリーダーシップを発揮することが可能であるはずです。

 リーダーシップとは、天性のものではないことが分かります。組織やスタッフの状態を理解することが、適切なリーダーシップをとるための前提条件になります。これから、組織やスタッフをよく観察し、適切なリーダーシップをとってください。